2010年11月24日水曜日

第七話 【庄内川河川敷】

チューさんが倒れた後、無断借用で一度だけ消防学校で練習をしたが、主人が
居ないのにもう使用するわけにはいかない。練習場所がなくなった。


在る日突然、木野 泰久(木野)から電話がかかってきた。彼は名西ラグビー
部の出身で『エンジャにゃ~ズ』という名前の名西ラグビー部のOBチームを
10年以上続けていると言う。
そんなチームがあるのも知らなかったし、その前にどうして我が家の電話番号
が分かったか不思議だった。たずねるとスミタのばあさんから、『名西出身の
名西ハリマオという14着のジャージを作った変な人たちがいるよ』と聞いたと
の事だった。
エンジャにゃ~ズの中で話題になったが、そんな変な奴、誰も知らない『モグ
リじゃない?』ということで電話がかかってきた。なにはともあれ会う事にな
った。
小牧メナード美術館前で待ち合わせた。夕暮れの中、彼は待っていた。シルエ
ットだけでその人だと分かった。ずんぐりむっくり、首がない。ラガー体型そ
のものだった。小島と3人で『つぼ八』で飲んだ。


彼らは、『自分たちに無断で名西を名乗るのは不届きだ。ラグビーをやりたい
のなら自分たちのチームに入れ』との意向だったらしい。だが我々と会って驚
いていた。
自分たちより先輩だったからである。彼らには、『不惑』近くなってラグビー
を始める人々がいる感覚がなかったようだ。

話しを聞いて言った。
「生意気こくな。おまえたちがハリマオに入れ」 先輩の強みである。

『それだけは勘弁して下さい』とのことだったので許してやり、チームは別々
だが練習は、いっしょにすることになった。彼らは白川公園で練習していると
の事だった。練習場所がなくなっていた我々にとっても好都合だった。話して
いるとナイスガイ(木野の表現)であり、ラグビーに対して熱い。まるで自分
の姿を見ているようでいやだった。どうして『エンジャにゃ~ズ』なんて変な
名前にしたのかたずねると、名前が中々決まらなくて候補が出ると『えんじゃ
にゃ~、えんじゃにゃ~』と言っていて決まったと言う。
まったく、下らない。我がチーム名も『インキーズ』にしなくてよかったと思
った。人に名前の由来を話せないところだった。


白川公園で練習を再開した。エンジャにゃ~ズといっしょだ。彼らは平均年齢
30才くらいのチームだった。ランパス1本走っただけで分かった。早い、疲れ
を知らない、しなやかである。全力で走るが追いつけない。あのデブの大原雅
彦(大原)に小牧小学校で二番目に早かったこの僕が追いつけない。若さに嫉
妬する。
とはいえ大人数での練習はたのしい。3回ほどラグビーらしい練習をしたが、
白川公園が改修工事に入るとのことで使えなくなった。またもジプシー生活だ。
グランドを探していたら小島が『庄内川河川敷にラグビーポールが立っている』
と言う。おまけに、いつ通っても使っていないとのことで帰りにいっしょに見
に行った。確かにポールは立っているし、だれもいない。「ここに決定」


さっそく、河川敷のグランドで練習予定を流す。これまでもそうだったがまっ
たく行き当たりばったりのチームである。また、それでうまくいくから不思議
である。

練習日、小島と庄内川河川敷に行く。ななな な~んと少年サッカーチームが
練習をしているではないか。

「みんな来ちゃうけどどうしよう」
『とにかく行こ』
「んだ」

ラグビーボール2つ抱えてグランドに下りていく。
サッカーチームのコーチらしき人が我々を見つけて駆け寄ってくる。
『ラグビーの方ですか?』
「そうですけど」
『すみません、うちのグランドが使えなくなっちゃったんで急遽ここに来たん
 ですが隅の方を使わせていただけませんか?』
「ええ、うちは今日、練習ですから半分使っていいですよ」
『ありがとうございます、じゃまにならないようにします』
「はい、困った時はお互い様ですから」

ハッハッハ むこうもモグリだった。

なにも知らないメンバーが、だらだらと集まってくる。
『なかなかいいグランドじゃないですか』 
まったくお気楽な奴らだ。
ボールに空気を入れようとしたら空気入れを忘れてた。サッカーチームに借り
に行く。
困った時はお互い様だ。


この時以来、庄内川河川敷は我がチームのホームグランドになり、エンジャに
ゃ~ズも合流して使っている。小石もあって、あまりいいグランドとは言えな
いが我々はもう6年このグランドを走っている。そしてこのグランドにどれだ
け集まったかがハリマオの証しだと思っている。ここでどれだけ走り、どれだ
け汗を流し、どれだけラグビーを考え、どれだけ話し合い、どれだけボールを
蹴り、どれだけタックルをし、どれだけ擦り傷を作ったかが仲間の証しである。
試合は、ここでの成果を示すただの発表会と考えている。



《庄内川河川敷に集まってくる各チームに告ぐ》

「このグランドはハリマオのホームグランドだぞ。 じゃまするな。 
 最初に無断借用したのは俺たちなんだぞ!!」





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